エロゲーと処女

われらはみっともない感情を多く抱えて、けれども、なんとか麗しいへりくつをくっつけて、そのみっともなさを隠そうとします。
自分もよくやりますが、はたからみると、あまりみられたものじゃないだろうなと思います。

http://d.hatena.ne.jp/tek_koc/20080627/1214520034
(上は消えている。Webアーカイブhttp://web.archive.org/web/20080710003100/http://d.hatena.ne.jp/tek_koc/20080627/1214520034 )

まず、時間的な問題で耽溺することができないけれども、エロゲーは大好きです。
色んなエロ妄想大好きです。
とことわっておいて、次に進みます。

処女性を求める心理って、いろいろ複雑なところもあるかもしんないけど、ひとつには雄間闘争の回避(忌避と、もっと強くいっていいかもな)ってのがあると考える。
われら男はたいがい別の男と自分を比べてる。自覚してない人もいるだろうけど、自分と別の男と、どっちが優れているかをひたすら比べあっている。その勝負から自由な男というのは少ない。
んで、われらオタクの多くは、その雄間闘争で劣位にあるへたれが多い。現実世界の雄間闘争でしんどい思いをしてるわけで、絵空事のなかでは、もうそんなんはいいっすよ、という気持ちの人は多かろう。
自分以外の男を知っている女性ってのは、その嫌気がさしている雄間闘争を思い出さざるをえない。その女性が過去に知っている男と比べられるのではないかって思いは、かなりきつい。たとえ、その女性がそういう比較をしない人であろうとしても、比較されているんじゃないかと疑ってしまう。
昔、時代物の劇画にこんなシーンがあった。娼婦として生きてきた女性が主人公(かなり高スペックな男)を好きになる。主人公もまたその女性を大事に思うようになる。悪役が女性を人質にとって主人公を呼び出す。女性は、自分のような汚れた女のためにあいつが来たりしないよ、と悪役にいう。そこで悪役がいう台詞がふるっている。「ちがう。やつのような男にとって、おまえのような女に愛されることは誇りなのだ。おまえが過去に知るどの男でもなく、自分を選んだということなのだから。」。そんな感じだったかと思う。ある意味身も蓋もない言葉なんだけど、はてなき雄間闘争の世界で生きるわれら男のありようを端的に言い表しているように思えて、ちょっとひざをうった。
男性経験豊富な女性ってのは自分で男を選んできた女性ってわけで、男の品定めを色々とやってきたわけだ。われら他人を品定めするのは好きでも、品定めされるのは嫌いだからね。なお、この辺の話で興味深いのは[<同性愛先進国はやおい後進国?(その2)− やっと分かった「エマニエル夫人の怒り」の謎>]に書かれていること。

エマニエル夫人は、同情すべき娼婦の前では優越感を感じるが、自由な女に選ばれるのは怖いと思っている臆病者の夫を通してフランス男性全体を怒っていたのだ。確かにエマニエル夫人は多情だ。だが少なくても自分の魅力だけで勝負している。夫が浮気をするのはいいが、自分なりの意志を持ち自尊心がある女性との勝負から逃げ、安易な娼婦に走ったことを怒っていたのだ。

読んでて、かなり心に刺さった。

だから、男性経験があるキャラの場合は、Fateの桜みたいな感じになる。桜は、陵辱され続けてきたわけだけど、ただ、力の前に屈して、もてあそばれてきただけ。自分から男を選んでない。桜が自分の意志ではじめて選び求めた男が主人公なわけだ。だから、過去の男と比べられたとしても、最悪な思い出を残すしかしてこなかった連中とだから、比べられてもどうということもない*1
逆に『同級生2』の柴門たまきみたいだとめっちゃ嫌われる。自分を選ぶと思っていたキャラが、別の男を選んでいた。確かに、きつい話なんだけど、やたらヒステリックな騒ぎが起きてた。あの叩かれようは、ちょっとひでえとか思ったよ。
なお、これは恋愛系のものに関する考察だ。人妻ものだったら、他の男(今の夫)を過去選んだが、その女性はその男に物足りなくなって自分を選んだと優越感を感じられたりするんだろね。また、男をつまみぐいして歩くお姉ちゃんも、精神的なものが介在しなければ、お手軽に助平させてくれそうなのは実にありがたい。

あと、細かいところ。

「金を持ってそうだから」なんて理由でくっついてきた、なんてのは恋愛物としてはアウト。

これは、よくわからない。最後の最後まで打算のものに対して恋愛ものとしてはアウトっていっているのだったら、そうだなと思う。
きっかけが打算だったらダメとかいうのじゃないよな?
男が女にひかれるきっかけとして、容姿が良い(かわいい。きれい)とかそんなのがあるけど、それだって結構たいがいなものだ。それだけでおわったら恋愛ものといわれてちょっと困ってしまう。
最初は打算から始まっても、だんだん互いを知るようになって、想いが深まって〜みたいな流れにすれば十分良い恋愛ものだ。

僕の性格が歪んでるだけかもしれませんが、一度あったことはもう一度あるかもしれない、なんてことは思ってしまう。

これまでなかったから、これからもないと思える人は別に性格ゆがんでないのでは?
これまでなかったからといって今後もないとは限らないわけですし。
性格がゆがんでいるというなら、男とつきあったことがなかった人が、男とつきあってみて「あ、男ってこんなもん? うわ馬鹿馬鹿し」みたいに思うかもしれないぐらいは考えてもいいと思う*2

オタク系の作品には処女が多いというのも、単に「純愛物としてそれっぽくなるから」という理由だけだと思う。

われらオタクの多くがへたれだからというのが、非常に大きな理由だと思う。処女じゃないと純愛物としてそれっぽくならないなんてのは、まあ、かなり女性に対して失礼な話でもある。(あと、男も童貞じゃないとダメなのか? 恋愛物でも、男はいくらか経験しているキャラ多いように思うが。)

だから、二次元キャラは処女じゃなきゃ嫌だという人でも現実にはそれを求めない人が結構居るんじゃないのかな、と。

現実の女性にそれいうと、嫌われるから求めないのだと思う。また、さすがに実社会でそれをいったら、バカにされるというのも知っている。2次元キャラ、絵空事の世界だったらどんな無茶なことを言っても考えても拒絶されない。

ちなみに、処女を求める心理は、めちゃめちゃ情けないもんだろと、わたしゃ突っ込みを入れますが、その情けなさがダメだとは言わない(実社会でその気持ちを全開にすんのはまずいけど。絵空事の世界に色々求めるのはありだ)。
絵空事の世界で、どれだけくだらぬことを考えようとも、それは自由だと考える。
妄想の中で色々しんどい世間のうさを忘れる。
とても大事なことだもの。
なかったら、俺は灰色の人生を歩いていかないとあかん。
エロゲーという、みっともないけど、素晴らしいファンタジーは、自分にとって、とてもありがたい存在だ。
ただ、実社会では、かなり身勝手でグロテスクな感情なのは確かで、そういうのに耽溺するのを妙な理屈付けて自己弁護するのはよそうよ、とも思う。
よけいにグロテスクだから。

追記:はてなブックマークhttp://b.hatena.ne.jp/entry/http%3A//d.hatena.ne.jp/tek_koc/20080627/1214520034)コメントから。

2008年06月28日 simatomoki 最終段落の話は納得性高いですね。 / 私の意見では「他の男性の存在を隠蔽するため」だと思ってます。その他男性が絡んでくる作品を描けるようになると、物語の幅が広がるんだけど。めざせ「アンナ=カレーニナ」

「他の男性の存在を隠蔽するため」。俺のかきよう(雄間闘争の忌避)より、ずっと穏当で柔らかい。今度使ってみよう。

*1:ちなみに桜はエロくて好きだけど、桜シナリオはあまり好きじゃない。Fateは少年ジャンプ的無茶理論と、妙に知的な理屈とが入り交じった作品で、それがまれに不協和音を奏でる。その不協和音が一番強いのが桜シナリオで、桜がどうして凜に負けるのかが、なかなか納得がいかないのだ。「いや、そういう理屈付けないと確かに凜は桜に勝てないけど……。それはあんまりにも無茶じゃね?」とか強く思わされた。自分、桜には勝って欲しかった(バッドエンドでは勝っているわけだが……。それはちょっと違うよね。)。日陰者が太陽の下を歩いてきたやつに勝つのっていいじゃん(いつもそんな話ばっかだといやだけど)。あれで桜が凜に負けるなんて、桜がかわいそうすぎる。まあ、桜が勝っちまうと世界はえらいことになっちゃうわけだが……。

*2:まあ、別にこれはゆがんでいるわけじゃないけどね。