なぜ,韓国と中国?

金谷武洋「日本語に主語はいらない」(講談社選書メチエ)を読んでいますが,本題とは関係のない序章に書かれていることについて少し.
日本と違いとっくの昔に夫婦別姓であるカナダは進歩的で素晴らしいといったことが書かれています.「ちなみに韓国や中国では昔から別姓であるから,東アジアでも日本は異色だ。」*1とも.
男女同権の考えを実現しているから,カナダでの夫婦別姓を賛美しているのだと思います.それなのに,なぜ韓国と中国を例に出すのでしょうか? 韓国と中国の夫婦別姓儒教による強烈な父系社会の枠組みと女性蔑視から来ています.女性蔑視の感情は日本とは比べものになりません.結婚しても女性は結局はよそ者扱いで,子供は父の姓を名乗ります.また日本のように奥さんが家計を握るなんてことも考えられない社会です*2.著者は朝鮮語を学んだことがあるそうですから*3,中国はともかく韓国の事情は知っていてもおかしくないと思うのですが…….
以前,知人と夫婦別姓について話をしたときに「韓国や中国は夫婦別姓でしょ」と言われました.ずいぶん昔から韓国や中国の夫婦別姓を持ち上げる傾向があるのでしょうか? 夫婦別姓を推し進めたいなら,たとえ形は夫婦別姓でも持ち上げてはならない事情をもった国だと思うのですが…….
最後に補足しておきます.金谷先生の日本語文法などの著書は非常に面白く,日本語に興味がある人には是非おすすめしたいものなのですが,カナダや韓国を紹介するときにたまにおかしな記述が混じります.そこら辺注意して読んだ方がいいと思います.

*1:これは原文をそのまま引用しました.

*2:ここ数年で韓国もだいぶ変わってきているようなことは聞きますが…….

*3:別の著書にそういったことが書かれています.