女性の権利

極東ブログ: 「中国男女平等と女性発展状況」白書を巡って
で思い出したサラ・ブラファー・ハーディー「マザー・ネイチャー」の一節。

 さまざまな善意の教養人が、この「息子熱」が自然に消えるのを待ちなさいと提言してきた。劇作家で、下院議員で、大使も務めたクレア・ブース・ルースは、それをずばりと公言した一人である。息子を欲しがるから中国人は大家族になる、とルースは言った。娘しかいない親が、息子が生まれるまでがんばりつづけるからだ、という彼女の指摘は正しい。「男児出産薬」こそが「[人口の]時計の進みを平和的に遅らせるための最も簡便な方法」だとルースは提言した。さらに彼女の見方によれば、娘が希少になればなるほど、女性の地位が上がるではないかという。
 しかし、需要と供給の法則はつねにうまく作用するわけではない。とくに、希少なだけでなく社会的権利を剥奪されてもいる性にとって、状況が不利に働いている場合には――。中国の都市部では、たしかに数の少なさが女性に夢にも思わなかった機会をもたらした。テレビのお見合いバラエティのような番組では、独身男性が必死に自分をアピールし、女性視聴者が将来の伴侶候補を品定めするあいだ、そわそわしなから呼び出しを待つ。しかし、都会の独身男性にそこまでさせるような女性の少なさが、逆に地方では女性の生命をかつてないほど危うくしてもいる。強姦、誘拐、さらには女性の売買までが続々と発生し、その件数は、結婚できない男性の数に比例して上昇している。たしかに女性は供給不足かもしれないが、階層としては決して向上していない。一九九五年の数字で言えば、中国は世界で唯一、女性の自殺率が男性の自殺率を上回っている国だった。

サラ・ブラファー・ハーディー(著), 塩原通緒(訳), 「マザー・ネイチャー(下)」, 早川書房, p49-50, 2005.

「マザー・ネイチャー」で提示されている参考文献は面倒なので書いていません。