高貴な野蛮人#2-2

id:ghoma:20050531 (元記事消えています)
id:hoshimin:20050529#1117371651のコメントへの返信。)
コメント欄に書こうかと思いましたが、ghomaさんがご自身のコメントを1つの記事として独立なさっています。記事として書く方が書きやすいので、独立した記事として書き、ghomaさんの記事にトラックバックさせていただくことにします。




人は人にすぎないとか、日本を含め先進国の方が罪は大きいというのは、同感です。先にghomaさんがお書きになった「“発展を義務付けられてしまった”社会」を選ばなかった国の人たちのことを、山本夏彦さんが何度か取り上げていましたが*1、そういった人たちにまで先進国と同じ責をおわすのは馬鹿げていることだと思います。
ただ、ありもしない、もしくはありえそうもない幻想の中に理想や憧れを見いだして、自分を恥じたり、他者を責めたりするのは何の意味もありません。


神話や伝承の中には生活の知恵やその集団の重んじる倫理や道徳が織り込まれているとは思いますが、こと性や生殖に関してはどれだけ意味があるのか疑問です。性に関しては色々と研究が進んだ現代でさえ、わけのわからない話が飛び交っています。男女の産み分けの本の広告をよく見かけますが*2、ああいう与太話は未だに残っています。女性の月ごとの生理に関しても、それが生殖と関わっているということはわかっても、詳しいしくみまで知り得るはずもなく、ある程度詳細がわかったのはごく最近の話です。女性の生理についてよくわかっていない社会での、生理を厭う考えは多く目にします。他にも性や生殖に関する誤解や思い違いは枚挙にいとまがないでしょう。また、性や生殖について色々な研究が行われている社会でも、それが広く行き渡っていなければ意味が無く、日本では助平なことは多くの人が好きで*3、セックス産業は質、量ともにかなりのものですが、そのくせきちんとした知識を持っていないから色々と問題が出ています。繰り返しになりますが、非常にややこしい、そのくせ理解しづらい、性と生殖に関する神話や伝承で、まともなものがどれぐらいあるか疑問です。迷信はやはり迷信に過ぎず、何かの効果が出ることはありません。逆に人を損なうことすらあります。


実際のところ、単なる仮説*4ではなく、人口管理のルールがあることを、そこに生きる人たちの観察記録など多くデータを収集調査して実証した人はいるのでしょうか? そこまでせずとも、冷静な視線で観察し、人口管理のルールがあると紹介している人がいるのでしょうか? 実効性のある人口管理のルールがあるのかどうにも疑わしく、

まあ、すべての未開(あえてこういいますが)民族について調べたわけではありませんが、中絶技術もないのにベビーブームがおきないのも確かなことです。

に関しては、先にも書いた食料、医療、暴力などの問題から、単に人が死にやすいだけではないかと思います。


ただ、

そういう民族も確かにあるのです。

人口を管理するしくみを発明できた人たちなど、まったくいないとまでは、僕も思いません。普遍的なことではなく、非常に希有な例だと思いますが、そういう人たちのことを実証した話があれば知りたいと思います。どういう条件が、そういったしくみを成り立たせ得たのかなど、有用そうなことを色々と知ることができそうですから。

すべてが殺し合いをするわけではないし、「縄文時代の何百年の間、人殺しの道具が出土しないということから、人間の本質は争いであるという通説を私は否定する、それを伝えるために、私は考古学を学ぶのだ」といった考古学者の先生がいたのですよ・・・誰だったか忘れたけど。

争い=暴力に関する上のような考えは人間が持つ暴力を正しく押さえるのに、なんら貢献しません。人間の暴力に関する問題を解決するには、人間の暴力をできるだけ正確に把握して、対処していく必要があるでしょうに*5、そういった作業を惑わせ歪めるだけです。
また、縄文時代をそれほど詳しく調べたことはありませんが、以前いくらか調べたときに感じたことは、縄文時代に対する言説の多くが、どこか歪んでいるということです。縄文時代の人骨に武器による殺傷や解体の痕跡があるものは発見されていますし、武器そのものが発掘されていないとしても、そこらにある木の棒や大きめの石で人は殴り殺せます。効率は悪いですが素手でも十分人は殺せます。そういった事を考えずに、夢のような平和な世の姿を縄文時代に託すというのは、どうなんだろうかと思います。僕は、縄文時代の人たちは、助け合ったり、ときにひどく争ったりという、今の僕たちと変わらない人たちだと考えています。今の僕たちと大きく違うと考える根拠は僕にはありません。ですから、おかしなユートピア的考えを押しつけるのは非常に失礼なことではないかと考えます*6
僕は、すべての人が殺し合いをするという極論を吐く気はありませんし、暴力は人間の本性の1側面に過ぎないとも思います。ですが、人間が抱える暴力から目をそむける考えは、百害あって一利なしだとも考えています。
(追記:20050922)
元記事が消えているので、そのことを追記しました。

*1:すぐにはどこに書いてあったかわからないので、引用はまたいずれ。

*2:本自体は、ただの与太話迷信に過ぎないでしょうから、内容自体には特に興味はありません。ただ、産み分けが切実な問題になっている人たちをさらに迷わせて追いつめるたぐいのものになりかねないんじゃないかと考えます。

*3:他人事のように書いていますが、僕自身助平な話は好きです。

*4:こういった神話や伝承がある、それが組み合わさって人口管理のルールとなっているというのも、実証されていなければ、仮説の域を出ません。

*5:問題の本質を理解しなければ、問題は解けません。

*6:たとえ賞賛の言葉であっても、それが相手の実際の姿から大きく離れたものであれば、相手の実際を理解してはいないことを表明しているに過ぎず、無神経で失礼な行為であると考えます。