昔信じてしまった言葉

ふいに記憶の中から出てきたことをば。
あと、「ネタにマジレスかっこわるい」って感じです。

好色な人間や、「英雄、色を好む」という俗言を信じこんでいる人間にとって、ラインハルトは単なる異常者でしかないであろう。人間は、自分より欲望の強い人間を理解することはできても、自分より欲望の弱い人間を理解することは至難であるから。

田中芳樹, 「銀河英雄伝説9」, 徳間書店, p56, 1987.

ラインハルトがヒルダと結ばれたあたりの話です。
ずいぶん昔このくだりになるほどなるほどと納得させられたことがあります。ですが、よくよく考えてみたら、どうもおかしいなと。ちなみに以下の話は「英雄」ならば、多くの女性を相手にしても、あまり責められないような社会での話を考えています。男女関係のもつれから容易に地位を失うことになりかねないような社会のことは考えていません。
ラインハルトは上昇志向の強い、トップになんとしても上り詰め、おのれの手で多くのものをつかもうとするタイプじゃありません。お姉さんを奪った皇帝への強烈な敵愾心から皇帝の座を目指しただけで、そうじゃなかったらわざわざ皇帝なんて目指すほど雄度の強い人物には思えません。優れた人物なので多くの業績を残したかも知れませんが、他人と争いに対する心構えも十分できないうちに足下をすくわれて日の目を見ない可能性もあったんじゃないかとも思います。
「英雄、色を好む」の「英雄」は、今風物語的な必至にみんなを助けようと頑張っていたら「英雄」になってしまったというようなものではなくて*1、ごりごりの功名心やら何やら抱えていて、上を目指し、多くの敵をぶっ殺して味方に勝利をもたらすような人物だと思います。
雄が金を得たり権力を得たりして己のステータスを高めようとするのは、繁殖戦略の一種ですから、極度に上昇志向の強い人に女好きが多いなんて言うのは何も不思議じゃなく、というか、女嫌いの方が不思議なわけです。そうじゃない人もいるでしょうが、そういった人は例外だと思います。「女は金についてくる」なんていう身も蓋もないことを言った堀江さんは、まさにそういった意味では「英雄」でしょう。優れた容姿もなく、ファッションのセンスもない。しかし、金があれば……。なんか、書いていて自分まで悲しくなってきました。
とまれ、「英雄、色を好む」をこういう風に使うところが田中芳樹先生らしいなあなんて思いますけれどもね。
(修正20050611)
ちょっと変なところを修正した。

*1:そういう人がいなかったとまでは思いません。