「出来る」と「作る」。
子供は授かりもの、「出来る」ものであるという感覚を失って、「作る」ものという考えになっているから、最近の育児はおかしいのではないか? そういった話をよく見かけます。僕も一時期は確かにそうかもなと思っていましたが、サラ・ブラファー・ハーディー「マザー・ネイチャー」で論じられていた、人間が古くから行ってきた子殺しの歴史を考えると、そう思えなくなりました。
僕らのご先祖様が、狩猟採生活を送っていた時代から、今まで、いえ、今でも、出来た子であっても、正常かどうか、育てられるかどうか、属する社会階層で有利な性*1かどうかなどなど、さまざまな条件を親は計算し、育てるか殺すかを判断してきました。今の僕らの社会で、自分たちにとって都合のよい時期に子を作ろうとするのは、子殺しによる選別に比べればはるかに穏当なものですが、ご先祖様がやってきたことと変わりません。ただ、手段方法が変わっただけのことです。オルダス・ハクスリー*2が「目的はサルのもの、手段は人間のもの」と言ったそうですが*3、確かにそうだなと思います。僕らは、ご先祖さまたちと考えることは変わらず、ただ手段のみが変わっています。
ちなみに、かつて行われていた子殺しを非難するとか*4、バースコントロールを攻撃するとか*5、そんな考えはありません。「出来る」と「作る」と意識が変わってきたせいで最近の育児はおかしいという話をたまにきくけれども本当にそうなの? というのが、ここでの話です。
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*1:書くまでもないことですが、男が有利になる場合は女児が、女が有利な場合は男児が間引かれます。どちらの性が有利になるかは、それぞれの社会や属する階層でころころ変わります。
*2:「すばらしい新世界」というデストピアもので有名な人物。「すばらしい新世界」は、今注文しているところで、本自体はまだ読んでいません。
*3:原典を知りたい……。
*4:いま、日本などで、生まれた子供を殺すようなことをしたら大変な事です。しかし、当時の事情を、今の考えで非難するようなばかげた真似はしません。
*5:バースコントロールは多くの恩恵を僕らにもたらしてくれていると思います。もちろん恩恵しかないようなものなど、この世にはまずありえないというのは、他の技術と同じことです。