できたことができなくなって

できたことができなくなることは、本当につらいことなのだと思わされることがあった。
弱くなることの苦しさを間近で見るのは気分が重い。自分自身が何かを失ったわけではないけれども、失った人のそばからしばらく離れていたいと思ってしまう。
働き者が働けなくなったときに、心のよりどころは失われる。自分に価値が無いように、生きている意味がないように感じる。
何かができなくなったからといって人の価値が減じるわけじゃない。たまに、そういうことをいう人がいる。記憶に頼って書いているので、間違っているかもしれないが、そのような感じの耳に心地よい美しい言葉を見かける。そうであればすばらしい。ただ、それを言っている人は……。いくらか能のある人のように思える。余裕のある人のように見える。その人たちが、もし自分のよりどころを失ったとして、自分が口にしていた言葉を信じられるだろうか? 自分も「あなたは失ったが、そのことであなた自身は変わらない」。そういう言葉を人に使うことは、もしかしたら、あるかもしれない。けれども、自分でもその言葉を半分ぐらいしか信じていない。何かを失っても、その人は変わらない。それは確かだ。けれども、人の中での立ち位置は変わる。かつてのようにあることはできない。たった一人で生きていける人間ならともかく、ほとんどの人は、多くの人の中で生きていく。人の中での立ち位置が大きく変わってしまったなら、その人は、かつてのその人ではない。「あなた自身は変わらない」という言葉は、慰め以上の意味を持たない。
まあ、その慰めが欲しいときもあるわけだけど……。