それは擁護じゃない

[車は安全 バイクは危険-名も無き空の途中で]

毎年の交通事故死亡者数の集計を見ると、普通車の運転者と二輪車(原付から大型まで含む)の運転者の死亡比率は、10:1 つまり安全であるはずの車を運転している人のほうが沢山死んでいるわけだ。こういうことを言うと、「車のほうが多く走ってるんだから当たり前じゃん」という日本語の意味すら分からないドライバの人も沢山いるが、これは比率のお話である。比率に絶対数は関係ない。(日本語すらきちんと理解できない人が、安全な運転など出来るわけが無い)

これって大きな勘違いをしているの? それとも数字の読み方がわかっていない?
えーと、普通車運転者の全体に占める死亡率と二輪運転者の全体に占める死亡率の比率が10:1というなら、上の記事は正しいと思いますが……。そんなばかなって話です*1。あと、10:1ってどこらか出てきた数値なのかもちょっと知りたいですね。ただ、「しかも、死亡した100人のライダのうち、9割が50CCの原動機付自転車に乗っていた人だという、驚くべきデータも残っている。」という話は、ちょっと信じられなくて、元データをどこでみかけたのかわかりませんが、それが本当だとして、かなり恣意的なデータを出しているところじゃないのかとか、かなり状況が特殊な場合のデータじゃないのかって気がします。

次のページは警察庁の資料です。
[交通事故発生状況(警察庁)]
平成18年度のデータを使わせてもらいます。
[平成18年中の交通事故発生状況]
ここで、
・自動車乗車中の月別死者数の推移
自動二輪車乗車中の月別死者数の推移
・原付自転車乗車中の月別死者数の推移
の死者数を合計すると、
・自動車乗車中の死者数=2359
自動二輪車乗車中の死者数=595
・原付自転車乗車中の死者数=525
となって、死者数の比率は2359:1120で、約2:1です。
なお、自動車乗車中ってのは普通乗用車以外もふくみ、また運転者以外も含まれるでしょうから、実際には2:1の比率はもうすこし小さなものとなるでしょう。まあ、おおまかな数値でもこまらないので2:1としておきます。二人乗りの二輪自動車も同様だけれども、二輪の二人乗りはあまり考えなくてもいいでしょう。また、この数値から考えてもでどころがどうあれ、10:1という数値は死者数を単純に比べただけのもので、全体に占める死者数の割合を比べたものではないと判断してよさそうです。
この2:1を見て、車が危険とは言えません。車とバイクの運転者の数が同じだったなら、そういってもいいわけですが、それぞれの集団は数が違います。車に乗る人間がバイクに乗る人間の2倍いれば、それぞれの集団での運転者にしめる死傷者数の割合は同じになります。そして、世間を見回すと、バイク人口って車乗る人間の何分の一、何十分の一といったものです。この辺、正確な数値がほしいところですが、そこまでは調べません。道路を走るバイクと車の数を見てるだけで、二輪運転者は四輪運転者よりはるかにすくないというのは妥当なことであると言っていいと思いますから(すごい厳密な議論ならちょっとどうかと思いますが、あらい話なのでご容赦願います)。
比率というのは一つの数値で、その数値がどういう形で出てきたモノかを考えないと、論の補強には使えません。
死者数の比はただの参考数値にすぎません。上のデータから言えば、絶対数がはるかに多い四輪の死者数が2300人なのに、絶対数が少ない二輪が1100人も死んでいるわけで、確率的に二輪が危険だというふうに考えられます。また、原付と自動二輪とでも、原付の方が絶対数が多い(それもかなり)であろうといってしまって問題ないと思われますので、原付と自動二輪では、自動二輪の方が危険だと言えます。
僕は、上の人が何を言っているのかわからないので、日本語わからない人間かもしれませんが、上の人は数学がわかっていません。そこまで大仰なことをいわないとすると、数字の読み方がわかっていません。
自分もバイク乗りなんでバイクを擁護したい気持ちはあるんですが、嘘ついたり屁理屈をぶちあげてまでバイクを擁護しようとは思いません。*2

ちなみに、四輪運転者と二輪運転者は独立した話じゃなくて、かぶっているわけですが、まあ、そこら考えるとややこしいので、上では四輪運転者と二輪運転者とは別物として計算してます。まあ、上ぐらいの荒い話なら、それで問題ないと思いますしね。

*1:まあ、記事書いた人のあとの文章読んでも、割合どうしの比だとはおもっていないようではありますね。もっとも、そう思っていないのに、絶対数は関係ないと言えるのはすごいですが。

*2:まあ、そうとう人をけむにまける技術があるならありかもしれんし、色々とどうしようもなくなったら、やるかもしれませんが……。自分にはそういう技術はないんで、やめときます。