「優しいサヨクのための嬉遊曲」

島田雅彦, 「優しいサヨクのための嬉遊曲」, 新潮社, ASIN:4101187096, 2001/07.
幼児性 地位ある者ほど始末が悪い島田雅彦さんの文章に触れ,こじつけめいた文章を書いてまで,嫌いなものを批難する人に思えるといったことを,id:hoshimin:20050128#1106934476 に書いたわけですが,それだけではなんなので,デビュー作である「優しいサヨクのための嬉遊曲」を買ってみました.
2本の短編が収められており,ざっと読んだだけですが,どちらも面白いものでした.面白かったのですが,なんというか自分がこれまで好んで読んできた作品とだいぶ傾向が違うので,何が良かったかとかをどうにも言葉にできません.
また人に勧めるかと問われたら,勧めようとは思わない作品です.僕自信,作者の言動などの予備知識が無く人に勧められて読んだのだとしたら,たぶん,こんなもの勧めるなと,僕に勧めた人に言います.色々と微妙です.
ちなみに,登場する青年たちは,お姉ちゃんと仲良くしたい,金が欲しい,名声が欲しいっていう誰でも思うようなことを,ご大層な理屈を付けないとやれない,自分の欲望のために人を殺すサイコパスの方が,よほど健康的に見える,なんとも不健康極まりない連中や,親の庇護の元ぬくぬくと暮らし,そこから飛び出る気概なんぞ欠片も持ち合わせていないくせに,反抗とかなんとかそんな言葉を繰り返すあまえた連中ばかりです.自分でも,よく最後まで読んだなと思います.この辺は作者島田雅彦さんの描写力のうまさとか,登場人物の扱いのうまさだろうなと思います.
とまれ,読んだ後に, id:hoshimin:20050128#1106934476 で書いたことは,間違っていないなとだけは思いました.
まあ,頭の中にあるものを形にできるように,もうちょっとこの人の作品に付き合ってみようかなと思います.形になるのは半年後か一年後か,もっと先かはわかりませんけれども.