占星術はエセ科学?

[ITmedia News:交通事故を起こす意外な要因は……]

この記事の元ネタって、[InsuranceHotline.com - Car Carma]あたりの話ですよね。そして、ざっと眺めていると、このページって『Car Carma』という本の販促ページなのですよね(販売ページへのリンク、[InsuranceHotline.com - Car Carma])。『Car Carma』は運転や車の事故と占星術が示すものの影響について書かれた本のようです。CarmaはKarma(カルマ。業とか訳される宗教用語だったかな?)とCarをくっつけた造語ですか。著者はLee Romanovさん(InsuranceHotline.com社長)。InsuranceHotline.comの発表は社長が書いた本を売るための宣伝じゃないのでしょうか?
もちろん、
「こういう調査を行った。有意な結果を得た。本説は有用だと思われる。詳細は、本著に!!」
というのはよくあるもので、それ自体に問題はありません。
「こういう調査を行った。有意な結果を得た。」の部分が妥当であれば。
10万人のドライバーについて調べたとありますが、データの数を用意して自分が望むものを読み取るというのは、ちょっと気の利いた人だったらできるんですよね(まあ、気の利いた人じゃなくても自分の望むようにデータを読むのはできますが、その読み方に対して、人を納得させられる、もっともらしい理屈をひねり出せなかったりします。)。データは規模が多くなればなるほど、さまざまな背景をはらみますから、いくらでも解釈を変えられます。星座で人を分けた集団があって、ではその集団の年齢性別による構成員の比はどうなっているのか? 若い男性が多い集団は事故を起こしやすいんじゃないのか? 高齢者が多く含まれている集団も事故を起こしやすいんじゃないのか? いろんなことが考えられるもので、星座と事故の割合に深い関わりがあるのかなんて、とてもわからないデータです。以前、InsuranceHotline.comのと似たことを徳島県警がやっていたようで、[星座と交通事故]では、そのデータは統計データとして妥当かどうかを論じています(有意じゃないという結論のようです)。何にせよ、ここであげられているデータだけで切符を切られることや事故に遭うことと星座との間に意味のある関わりがあるかなんてわかりません。データの扱い方とかは『Car Carma』を読めばもっと詳しいことがわかるのかも知れませんが、宣伝用に提示してきたデータだけでお腹いっぱいです。
僕は占星術そのものは疑似科学だとは思いません。占星術の理論は占星術の中で閉じている*1という印象*2で、科学を装っているようには感じません。ですが、InsuranceHotline.comの宣伝ページはそれを踏み越えたと感じます。占星術の理論から物事を判じるところにとどまらず、統計という手法の威を借りて、疑わしいデータを元に自分(自分たち)の主張、そこから生まれるものを売り込むとなると、同じ手法を用いている他のエセ科学と同類と見なされたとしても仕方がありません。科学の土俵に自分からあがったのですから。キリスト教の聖書に書かれたことをエセ科学だという人は、まず、いないと思いますが、疑わしい証拠とともに聖書の妥当性を訴えるID(インテリジェントデザイン)論や創造論となると、エセ科学と言われます。繰り返しますが、占星術そのものをエセ科学というのは間違っていると思いますが、InsuranceHotline.comのやっていることはエセ科学と批判されてもおかしくないことです(徳島県警のも同じです。)。
ITmediaさんも販促ページを真に受けて、変な記事を書いたなあと思いますが、おかしなことを真に受けてよく日記を書く僕としては、お仲間がいる……と、うっかりは僕だけじゃないと、ちょっと安心していたりします。安心するなといわれそうですけれども……。

なお、ITmediaの記事関連を調べていて見たものの中で、下の記事にある追記の方が、星座の影響よりも説得力があると思いました。

[Kazuho Oku's Weblog : 野球選手むきの星座、むかない星座]

12:55 追記: いちおうマジレスしておくと、交通事故の話もスポーツ選手の話と同様、早生まれ遅生まれの性格差が原因とも考えられるんじゃないかと思います。というか、そう思ったから、上のエントリを書いたわけで... 実際、InsuranceHotline の調査結果を見ると、夏生まれ (北米は9月から新学年) の人は事故率が一番低いグループです。逆に、オーストラリアの調査では、春生まれ (たしか1月から新学年) の人の事故率が一番低いようです。

大人になると数ヶ月の誕生日の差は小さいわけですが、子供の頃は数ヶ月の差というのは大きいです。ちょっと体が大きかったり、知恵がまわるだけで、他の子より優位に立ちやすい。それが、集団内での振る舞い方に影響することは十分に考えられます。「雀百まで踊りを忘れず」という言葉がありますが、子供の頃に身につけたものは後々まで残ります。僕は不勉強なので知りませんが、生まれた月と性格の傾向を調査した人はいてそうです。もっとも、元データは年齢性別の比率とかをきちんと考えてデータを取っているようには思えないので(あくまで印象だけれども)、あのデータからは妥当な解釈は出てこないんじゃないかな〜とも思います。

*1:念のため書いておきますが「閉じている」というのは閉鎖的という意味じゃありません。「完結している」とか、「他のものに依らない」とか、そういうのを「閉じている」というふうにいいます。

*2:よく調べていけば越境しているかも知れませんが……。