守る対象を知らない

http://d.hatena.ne.jp/asakoo/20050721

僕がいつも不思議に思うのは動物愛護を唱える人たちが動物とか自然について詳しくないって事です。(詳しくないというよりも、妙な夢を見ているといった方がいいかもしれません)

例えば自然界で ライオンがシマウマを育ててから 殺すでしょうか。

これは、何のたとえにもなりません。動物種はそれぞれ固有の生態をもっています。他の動物種にとっておかしなことも、別の動物種にはおかしくないということはあります。また、上の論法で行けば僕ら人間の農業に関しても、「シマウマが植物を育ててから食べるでしょうか?」という言い方もできます。はっきり言ってどちらのたとえばも無意味です。
ちなみに、他の動物がやっていないからおかしいというのであれば、動物じゃありませんが、蟻の一種にキノコを育てて食べるものがあります。他を育てて安定した食糧確保ができるようにする。他の生物でもそういうのをやっているのはいるわけです。蟻よりもはるかに複雑な行動がとれる人間が、他の動物を育てて食ったとしても、なんらおかしなことじゃありません。
なんにせよ、この件に関しては、他の動物がやっていようがやっていまいが、人間という動物種のもつユニークさの範囲にとどまると思いますけれどもね。

狼が人間の子供を拾って育てたら 殺さず一緒に暮らすのが 動物の自然な情と言うもの

それは自然じゃありません。狼は人間の子を食います。『マザーネイチャー』という本で、インドでの話が紹介されていましたが、狼は、まれに人里まで来て、子供を襲って食うってことがあるようです。アマラとカマラあたりの話をきいて、上のようなことを言っているのかもしれませんが、あれは作り話です。人間の子供という、牙も爪もない、力もない、足も遅い、弱い個体は、狼にとったら殺して食いやすいよい獲物です。
他の動物ですが、チンパンジーの研究で有名なジェーン・グドールの本にありましたが、チンパンジーは人間の赤ん坊を食ったりします。だから、研究グループにおいてそういう惨事がおきないようにきちんと気をつけていたとか。
人間、特に先進国である程度きちんと飯が食える人間というのは、ものすごい食料に余裕がありますから、まわりに動物がいても、食い物に直結しないわけです。牧場の牛をみても、その牛が殺されて自分たちが食べるものになるとは、すぐには考えられない人もおおいんじゃないでしょうか? ですから、つねに飯にありつけるかどうかわからない野生の動物の状況を想像しがたくなっています。だから、狼が人間の子を育てる、というようなことを信じてしまうのだと思います。(まあ、自分も昔はそういう話もあるのかと信じてましたけどね……。)

なので、

狼が群れからはぐれた人間の子供と出会ったら、殺してくっちまうのが自然な情と言うもの

となるんじゃないでしょうか。

もはや、そんなことは言えないんじゃないかという気がしてならない。世界中で起こっている惨事を目の当たりにするたびに、急進的だけど、人間は地球上にい続けてはならないのだという思いがしてならない。地球上で、人間だけが突出して異常な存在だと思う。

これも、人間含めた動物にたいして理解が深まれば、全然人間は異質じゃないと考えるようになると思いますけどね。人間が他の動物種から際だっているのは、複雑な事が考えられる脳みそですが、知性は取り得る行動を増やしてくれるだけのものです。行動の根幹たる欲求は他の動物とほとんど変わるところはありません。実際、他の動物も結構えぐいですよ。己の欲求に忠実に生きています。自然界のバランスというのは長い時間をかけて落ち着いたもので、その間には滅ぶ羽目になった種も多かったでしょう。今、人間が落ち着いた環境をシャッフルしてしまっています。たとえば、ある場所にそれまでいなかった生物を持ち込んだりして、です。そうなると外来種と在来種のあいだに争いが発生します。弱い種は、その場所において絶滅に追いやられることがあります。今、多く問題になっていることです。他の動物種も人間とおなじく遠慮なぞしません。彼らは彼らの能力の範囲で無茶をやります。色々見ていると、人の本性も、他の動物種の本性もそう変わらないものだと感じます。人間が異常だとしたら、その突出した「力」です。
なので、上の考えは急進的じゃなくて、単にナイーブなだけです。なお、人間が滅びれば、人間の占めていた場所を別の動物が占めるだけでしょう。人の次に、別の動物種が人と同じ事をやると思います。