いつの動物観?

[マガジン9条『この人に聞きたい』きむら ゆういち]

「『マガジン9条』発起人の一人」らしいですが……。

編集部:オオカミも集団で行動していますが、お互い、殺し合うことはしないそうですね。
きむら:しないですね。犬やオオカミは、相手に腹を見せたら絶対に攻撃しないというルールが、動物界ではペットであろうと野生であろうと、完全に守られていますね。それで思ったのです、殺傷能力の高い動物には遺伝子の中に “同じ種同士は、殺し合ってはいけない”という符号が組み込まれているのではないかと。だって同じ種で殺し合ったら、その種は簡単に絶滅してしまうわけでしょう。

いつの時代の動物観ですか、これ?
ライオンの子殺しはテレビでも紹介されたことがありますし、猿の子殺し(雄がやるものと雌がやるものがある。雄は自分の子を産ませるため。雌は自分の子のライバルになりそうな小猿を排除するため。)なんかも動物行動学系の本では結構出てくるポピュラーなネタです。他にも小型の哺乳類で子を産んだときにそのときの状況から子を育てるのが難しいと判断したら産んだ子を全て殺すという種もあります。雌にありつけない(ハーレムを作れない)アザラシが子アザラシを強姦して、その体重差から押しつぶしたりとか同族殺しの例は多くあります*1
きむらゆういちさんの話は、すごく有名な動物行動学者コンラート・ローレンツあたりの動物観が下敷きにあるんだと思いますが、今の研究からすると相当おかしなものがいくつもあるんですけれどもね。
オオカミやらがある程度のところで攻撃をやめるのは、殺し合うところまでやると強い方にとっても損だからですよ。相手も死にものぐるいで攻撃してきたら無事では済みません(窮鼠猫を噛む、ですね)。怪我を負ったところに別の敵に出くわしたらシャレにならない事態になります。相手が戦いをやめて逃げてくれるなら、それ以上戦う必要はありません*2
動物は同族殺しをしないなんていうのは昔ならともかく今ではただの与太話です。何かを聖と奉り別のモノを邪として貶めるのはよく見かけるものですが、与太話持ち出して自分含めた人間を批判してどうすんの?って思うのですけれどもね(それに与太話なんか持ち出さなくても批判材料はようけあるわけですしね……、悲しい話。)。

もう一つ。

これからは、9条をシンボライズして、9条マークを付けている国民は、絶対に攻撃するべからずという、国際的な共通ルールを作り、アピールする。それこそが、一番強力な自衛手段だと思います。

これって、どうやって戦争している人たちに遵守させるのでしょうか? 赤十字付けている人たちは戦場で役に立つから見逃してもらえるんじゃないのかと思うのですが……*3。9条のマーク付けている人って、ただそれだけの邪魔くさいオブジェクトに過ぎないと思うのですよ。加えて敵が9条のマーク付けて非戦闘員よそおって撃ってきたら、判別の手間を惜しんで、邪魔くさいオブジェクトを一掃しようとしても何も不思議じゃありません。撃ち殺せば非難されるでしょうが……、勝者は気にしませんよ。敗者はこってりしぼられるでしょうが。

*1:子殺しについていろいろ書きましたが、猿の子殺しといっても、猿自体いろいろな種がいますから上の話はかなり乱暴です。ここに書いた話は嘘は書いていないつもりですが、かなりあらく書いています。そこのところご注意ください。

*2:もっときちんとした話は、[「生命の適応戦略」進化生物学者ジョン・メイナード=スミス教授に聞く 進化的に安定な戦略ESS理論(ゲーム理論による)の提唱者(インタビュー 九州大学巌佐庸教授(数理生物学))]あたりがいいと思います。

*3:この辺想像で書いています。いずれ調べてみようかと。っていつになることやら。