サラ・ブラファー・ハーディー「マザー・ネイチャー」 (読了)

面白い。
スティーブン・ピンカー、マット・リドレー、ジャレド・ダイアモンドなどの本を読んだときの興奮とおなじものを感じ、他の本を放り出して、暇を見つけては読んでいました。
雌の生存戦略や繁殖戦略は、進化にどういう影響を与えたか、それは母と子の関わり、子の生存戦略をどのように変えたか、子にとって親とはなんなのか、非常に多くの話題を研究そのものだけではなく、研究を取り巻く(取り巻いていた)状況なども含めて論じています。男が身勝手に作り上げた母性神話、その神話がどれだけナンセンスなものであるかを語る声は力強い。また、多くの優れた先人たる男性科学者たち、チャールズ・ダーウィン、ジョン・ボウルビー、エドワード・O・ウィルソン、ロバート・トリヴァース……、優れた業績や人となりに敬意を払い、しかし、男性科学者が持つ偏見に対しては強く異を唱えています。それもかなり手厳しく。けれども下卑ていません*1。批判の仕方も誠実です。僕は、魂がねじれていても、研究がまっとうなら、その人は優れた科学者だと思っていますが、性格のまっとうな人の書いたものの方が読んでいて、やはり気持ちいい。

マザー・ネイチャー (上)

マザー・ネイチャー (上)

マザー・ネイチャー (下)

マザー・ネイチャー (下)

*1:まあ、原著じゃありませんが、話の流れから考えて、あまり無茶な物言いをしているようには思えません。