狂信者ジョン・マネー

狂気のマネーの性転換手術
成城トランスカレッジ!より)
「ブレンダと呼ばれた少年」,できるだけ感情移入しないように読みました.心が近づくとブレンダやその家族があまりに痛々しく,そしてブレンダに手術を施したマネー博士の歪んだ情熱がおぞましく,何度もこれがただの絵空事であったならと思わされました.
上の記事で触れられている部分を引用してみます.

 マネーが子供のころに抱えていた問題は、腹立たしい父親との関係によっていっそうつらいものとなっていた。六〇年後、マネーは恨みを込めながら自分の父親のことをこう書いている。果樹園に集まってくる鳥を無慈悲に撃ち殺した野蛮な男。割れた窓ガラスごしに四歳の息子をむちで打ち、虐待とも言うべき尋問をした男。自分でも書いているように、マネーはこのできごとによって、「野蛮な男らしさ」にたいする嫌悪感を生涯いだきつづけることになる。
 父親が持病の腎臓疾患で亡くなったのは、マネーが八歳のときだった。「父は、私がその不条理な残酷さを忘れ、許すこともできないまま死んでしまった」と彼は書いている。父親が病院にかつぎこまれてから三日後にようやくその死を知らされたショックは、伯父のひとりに、これからはおまえが一家の主にならなければならない、と言われたことによってさらに増すことになった。「ハ歳の少年にしてみたら、それはいささか重すぎる務めだった」と彼は書いている。「それは私に多大な衝撃を与えた」ひとりの社会人として、マネーは「一家の主」の役割を永遠に避けることになる。一度は結婚したものの長続きはせず、五〇年代の前半に離婚、その後二度と結婚せず、子供もひとりも持たなかった。
 父親の死後、マネーは母親と未婚の叔母たちに囲まれ、きわめて女性的な環境で育てられた。男性にたいする彼女たちの非難は痛烈で、それが一生涯マネーに影響を与えた。「私は自分が男であることに罪の意識をおぼえ、苦しんだ」と彼は書いている。「そう、卑劣な性である男の仮面をかぶっていることに」もちろんその仮面とは、ペニスと睾丸のことである。大人になったマネーが成人や幼児の性転換を行い、世界的な名声を得たことを考えると、つぎのコメントには無気味な響きが聞きとれる。
「私はよく思ったものである。家畜だけでなく、人間の男も誕生時に去勢されたら、世界は女性にとってより良い場所になるのではないかと」

「ブレンダと呼ばれた少年 ジョンズ・ホプキンス病院で何が起きたのか」, p29-30.

……子供時代に感じた抑圧をはねのけ,積もった怨念をはらすことを,己の人生の復讐を,普遍的な正義と取り違えて,人体実験を行ったとしか思えません.
また,マネー博士は「性行のまねごとであるリハーサルプレイは,子供たちが性的に正常な大人に成長するため,自然に意図されたことなのです」(p107)という信条のもと,女の子として育てられているブレンダが正しく女の性を獲得できるようにと,ブレンダとブライアンに性行のまねごとをさせます.ともに服を脱がせて,ブレンダは四つんばいになるよう,ブライアンは股間をブレンダの尻に押しつけるよう強要します.そのことはブレンダとブライアンの心に深い傷を残し,デイヴィッド(本来の自分にもどった後のブレンダ)は忘れたい記憶を思い起こさせる出来事に出くわしたとき,ヒステリックに泣き叫んだそうです(p103).
このような吐き気と怒り,それ以上に怖気を感じる話ばかりです.
さらに救われないのは,デイヴィッドが自殺していること.そして,記事では触れられていませんが,弟のブライアンも自殺していることです*1