「なぜフェミニズムは没落したのか」

荷宮 和子,「なぜフェミニズムは没落したのか 中公新書ラクレ (159)」, 中公新書ラクレ, ASIN:4121501594, 2004.
拾い読みしたところですが…….
親に甘えて食わせてもらっていながら,非のないことまでいいがかりをつけて*1親をけちょんけちょんにけなし,ばか笑いしながら生きている甘えたとっちゃん坊や.
文章から感じる著者の印象です.
女権運動をしくじらせることになった上野千鶴子教授などフェミニストへの憤り,男への恨み節などなどを下手にごまかして隠そうとしない態度にはすがすがしいものを感じますし,人の本音*2が伺えるので自分にとって十分な価値のある本ではあります.ですが,著者が恨み辛みにとらわれて,糾弾する対象がかなり歪です.いちいち書いていくのは面倒なので,一つだけ挙げると,「男が群れたがるのは悪弊である」だそうです.群れる事(集団を作ること)って悪いことですか? 狩りは,集団で役割分担を行うことで獲物を捕らえやすくなるわけですし,農耕では,灌漑工事なんて集団じゃなきゃできませんやね.また,人が個人個人でバラバラだったなら,自分に関わるありとあらゆる事をやらなければいけません.服を作るのも家を建てるのも何もかも.分業なんてのは集団があるからこそできる.群れることの弊害も当然あるわけですが,それよりも利点が多い.群れる弊害が利点よりも大きければ,誰も群れませんがな.著者はそういったことを考えているのかどうかは書かれているものだけでは判断できませんが,感情的に,そしていかにも厭わしいものとして「男が群れる」ことを書いていますから,そういう視点はないように思ってもよさそうです.著者自身も集団に属する恩恵は十分に受けているわけですが,それに対して公平な視点を持たず,不平不満ばかり言っている.「群れ」がらみで,自分は子分を作れなかったが,それを誇りに思ういったことを著者は書いています.本当でしょうか? 子分やら派閥を作りたかったけれど,作れなかった.それが不満だから,「あのぶどうはすっぱいのだ」と思いこもうとしているだけでは?
上のような感想が積み重なって本感想文冒頭に続くわけです.「フェミニズムが没落した」のは現実と遠くかけ離れた上野千鶴子教授たちだけの責任ではなく,自己を省みることがない著者のような人たちの責任でもある.2重の意味でフェミニズム没落の理由がわかる良い本だと思います.


(追記)
女性なんで「坊や」じゃありませんが,「とっちゃん坊や」の女性版を僕は知りませんから,「とっちゃん坊や」としてあります.「とっちゃん坊や」の女性版をご存じの方がおられましたら,お教えください.

*1:親に食わせてもらってても,非のあることで批判するのはおかしなことじゃありませんよ.どちらにも言い分はあるでしょうから,こじれて大変なことになるかもしれませんが,その辺覚悟の上でがんがんやってください.しかし,非のないことにまで言いがかりを付けるのはただの阿呆です.つーか,貴様何様のつもりだと…….

*2:もちろん,さすがにまずいと思えることは書いてないでしょうけれどね.