チンパンジーの子殺し

サラ・ブラファー・ハーディー「マザー・ネイチャー(上)」に、チンパンジーの子殺しについて書かれていましたが、雄だけが子殺しをおこなうのかと思っていたら、雌も自分より序列が下の雌の子を殺して喰ってしまうことがあるのだとか。錯乱とかそういうものではなく、自分の子が群れのなかで高い地位に付けば自分の序列もあがるため、自分の子のライバルを減らそうと殺すようです。序列が下の雌の子を狙うのは、序列が下の雌からは致命的な反撃を受けにくいからでしょう。
コンラート・ローレンツは動物の攻撃には(人間と違って)抑制があるなんてことを言ったそうです。まあ、ある程度の力をもつ個体どうしなら、相手が負けを認めているときに、なお相手を殺そうとすれば、必死になって反撃してくる相手に自分も大けがを負わされかねません。負けを認めているなら、それを受け入れる方が得です。しかし、相手を殺すのがそれほど難しくなく、殺した方が得な時は容易に同族殺し、子殺しを行う。ローレンツの動物観は、今では通用しないなと、そんなことを思いました。

マザー・ネイチャー (上)

マザー・ネイチャー (上)