副島隆彦さん

副島隆彦さんは、アポロの月面着陸はアメリカ政府の情報操作だとかいう陰謀論丸出しのトンデモ発言かましているお人で、けれども、実際にどういうことを言っているのか僕は知りませんから、どんなことを言っているのか、副島隆彦さんがご自身のサイトで書いていることをちょろっと読んでみました。
読んだのは、「今日のぼやき(http://www.snsi-j.jp/boyaki/diary.cgi)」の会員にならずとも読める2006.01.11分です(2006.01.23分も読めましたが、副島隆彦さんが書いたものではないようですから、途中で読むのを止めました。)。
えーと……なんかすごいです。自画自賛と自分を認めない人間へのひがみ恨み辛みねたみそねみに充ち満ちています。

だから、私は予測や予想をはずさない。それは、私が政治思想の研究学者だからだ。金融アナリストや経済学者のような、自分たちの住んでいる狭い金魚鉢の中でしかものごとを考えられない人間たちとは違う。私は、この世界を覆(おお)っている、一番大きな枠組みである、政治権力の動きと、世界政治の動向の分析と、世界基準(ワールド・ヴァリューズ world values )での政治思想(ポリティカル・ソート political thoughts )の専門家だから出来るのだ。このことを分からない人間が、いくら私、副島隆彦をひがみ根性と、嫉妬から、けなして、くさしても無駄だ。匿名で副島隆彦の悪口を書いている、数名の評論家どもがいるが(私には、その名前まで分かっている。そのうち、実名でたたく)、彼らこそは、熱心な副島隆彦の読者であって、私からの泥棒人間だ。 恥を知れ。

「だから、私は予測や予想をはずさない。それは、私が政治思想の研究学者だからだ。」→「だから、私はコンピュータの操作をミスしたりはしない。それは、私がプログラマーだからだ。」とか言ってみたりして。

上のようなの以外でも、すさまじい。

Adam Weishaupt ( founder of the Illuminati in 1776 ) : “ Reason will be the only code of man. This is one of our greatest secret . When at last Rreason becomes the religion of man , then will the problem be solved .” (p.330)

 副島隆彦です。この英文は、たったの3行です。原書の330頁にありました。この一文を読んだときに、私は、息を呑んで、はっと驚き、全身が震えるのを感じました。この英文の本当の意味が分かったぞ、と自分で思ったときに、ひとりで感激しました。

 日本では、おそらく私、副島隆彦だけが、この英文の意味が正確に分かるだろうと、私は何のためらいもなく断言します。
それでは、まず、普通の優秀な翻訳家か、政治思想を専門とする学者の訳文を、書きましょう。

(普通の訳はじめ)

 アダム・ヴァイスハウプト(1776年のイルミナティの創設者):「理性が人間の唯一の法典となるだろう。このことが私たちのもっとも大きな秘密のひとつである。ついに理性が、人間の宗教となるときに、その時に、問題が解決するだろう」

(終わり)

副島隆彦さんが訳すと次のようになるそうです。

副島隆彦による訳文を載せる)

 アダム・ヴァイスハウプトは、1776年に秘密結社、イルミナティを創設した。その時の、結成の演説(説教)の中で、イルミナティの組織結成の目標を次のように説いた。
 
「われわれイルミナティは、理性(りせい、reason , vernunft フェルヌンフト)すなわち、利益欲望の思想、金銭崇拝の精神を、われわれ人間にとっての唯一の法典(規則の体系)にするであろう。これこそが、これまで人間(人類)が解明できなかった最大の秘密なのだ。金銭崇拝(利益欲望の精神、すなわち理性)が、人間にとって信じるべき信仰、宗教となる時に、その時に、ついに、われわれ人間が抱えてきた最大かつ唯一の大問題が、解明され、解決されるのである。」

副島隆彦の訳おわり)

副島隆彦さんは、何度も何度も私にしか訳せないといったことをかいてらっしゃるわけですが……。確かに、副島隆彦さんにしか、ああは訳せないんじゃないかと思います。ホントに。わかりにくい点にさりげなく言葉を付け足すのはいいと思うんですが、あんな超訳してしまっていいものなんでしょうか? いえ超訳というより、思考が跳躍しているといった方がいいような……。僕自身、人の考えていることを想像して、ごちゃごちゃと書くことはありますが、なんか、これはそういうレベルじゃないように思います。「理性が人間の唯一の法典となるだろう。」みたいな話は科学とか哲学とか好きな人ならそういうこと言いそうな、というか昔からさんざん言われてきた言葉じゃないのですか?なんて僕は思ったりするわけですが、それに陰謀論たっぷりの意味をここまで付け加えられるものなのかと驚かされます。ある意味では非常に豊かな想像力です。これが、副島隆彦さんの「真実読み破り訳文」らしいのですが、「真実読み/破り訳文」ってことでしょうか。「破」を「誤」に改めて「真実読み誤り訳文」でもいいかもしれません。

この「真実読み破り訳文」にけちをつけるなら、

もし、上記の私の「真実読み破り訳」にケチを付け、異議を唱える者がいたら、その者は、どうどうと名前を名乗った上で、私に問答を提起してきなさい。私が、10時間ぐらいかけて、懇切丁寧に説明します。

らしいのですが、妄言を10時間も聞かされて僕の人生の貴重な時間を無駄にしたくありませんから、匿名でけちを付けさせていただきます。

私は、これらの二言語通過、翻訳、真実読み破り訳文、体や肌触りで分かるような浪花節(なめらかな)日本語訳への問題を、これからも追究する。そのために、急いで、弟子たちに、『政治思想の本の真実読み破りと、なめらか訳の技術の伝授』をやってしまいたい。そうすれば、以後は、私の弟子たちが、すぐれた翻訳をやって、むずかしいがしかし定評のある外国書を日本人知識層が、嘘つきではなく、知ったかぶりではなく、いいかっこしいではない、西欧の最先端思想を自分だけ知っている、分かっている風の、だましの思想の嘘輸入がなくなる。これを、なんとしても、はやく実現しなければ、いけない。

とご自分の技術を伝授したいとおっしゃるわけですが……。なめらかな日本語訳というのは何かの冗談でしょうか? 副島隆彦さんの文章はかなりユニークです。たとえば、読点をこんなところにうつの?というところにうって、しかも数が多い、そんな文が多く出てきます。読点がやたらと打たれているために、文を読むながれがぷちぷちととぎれてしまい、非常に煩わしい。ただ、最初にその煩わしさを乗り越えると、不思議と奇妙なリズムのようなものを感じるようになります。おかしな心地よさを感じます。もしかしたら、こういう不可思議な心地よさゆえにファンがいるのかも……なんて思いますが、この読点のうちかたは副島隆彦さん独特のセンスによるものだと思います。まねしようとしてできるものではない、誰かに伝授できるたぐいのものではない、そういうセンスによるものだと思います。もし、お弟子さんたちがまねしたとしたら、煩わしいだけの悲惨なものになると思います(もっとも、このリズムを感じるのは僕だけかもしれませんから、そうなると単に読点が多い、煩わしいだけの文です)*1
まあ、実際のところ文体よりも、陰謀論をたっぷりまぶした超訳の方が問題で、副島隆彦さんの超訳技術などなどをたたき込まれるお弟子さんの名前なんかは、WEBサイトですべて公開しておいてほしいところです。その人たちの本はできるだけ買わないようにしますから。

他にも脱力ものの点は多くあるんですが、次のくだりなんかいろんな意味ですばらしいです。

中国語がすらすらと読めた空海(くうかい)上人は、おそらく、中国人との合いの子だったから私の言う「クリオール人間」(政治支配を含めて二つの言語を上下につなぐ人間)だったのだろう。

……中国人との混血なら中国語がすらすら読めるのでしたら、日系人だったら日本語がすらすら理解できるんでしょうか? 母国語でも難しい本や言葉になるとお手上げの人はいくらでもいます。空海上人が中国語がうまかったのは、たんにご自身の才能と努力のたまものでしょう。

専門外でかっ飛ばす人は多くて、それは別にいいと思うのですが、なんというか……専門分野でもちょっとやばげな人に思えます。とりあえず、副島隆彦さんやそのご一門が翻訳したものや著作には、できるだけ手を付けないようにしようかと思います。ただ、専門分野が陰謀論だったとしたら、専門分野では優れた業績を成し遂げている(?)といってもいいのかもしれません。副島隆彦さんの本領が発揮されているかもしれない「人類の月面着陸は無かったろう論」は買ってみようかと思います。と学会の「人類の月面着陸はあったんだ論―と学会レポート」といっしょに。

(追記と修正)
2006/01/25。ちょっと修正して書き足した。

*1:読点を多くうってリズムを出す。ある小説(電撃文庫)を読んでいて、文章にリズムを持たせるためと思うのですが、ここぞというところで読点を多くうって文を書く人を見ました。結構、思いつく人が多い手法なのかもしれません。ただ、電撃文庫のは効果を狙って書いてそうなんですが、副島隆彦さんのは天然でやってそうな気がします。